ども。さん太(@PonkotsuSanta)です。
前記事では、商品やサービスに名前付け(ネーミング)する際の法則とコツについて解説しました。
私はデザイナーという仕事柄、広告やPOP、ポスター、商品のパッケージ(包装)に携わることが多いのですが、キャッチコピー(キャッチフレーズ)もセットで提案するケースがけっこうあります。
モノと情報があふれる現代では、いくら商品やサービスの品質が良くても、それだけでは思うように売れません。
そのため、多くの商品やサービスの中からお客様に「振り向いてもらえるような」キャッチコピー(キャッチフレーズ)が欠かせないのです。
本記事では、難しいテクニックや言葉選びのセンスがなくても「人間の本能的な欲求」を刺激して「心を動かす」コピーが書ける、法則と作り方について解説します。
・企画書や提案を光らせる、インパクトのあるキャッチコピーを書けるようになりたい
・お店のPOPやポスターがイマイチ。もっと売上を伸ばせる文章に書き直したい
・ついついクリックしてしまう、ブログやWebサイトのタイトル名の付け方を知りたい
・外注先から上がってきたデザイン。キャッチフレーズがいまいちだけど、どこを直したら良いのかわからない…
「売れるコピー」のためには「人間の本能的欲求」をまず知ること
人間は、たとえ親子であっても全く趣味や好き嫌いが違うほど、個人間の「差」があります。
しかし、「万人受け」という言葉があるように、多くの人の心をつかんで動かす「言葉や表現」があることも事実です。
多くの人の心に刺さるキャッチコピーを作り出すためには、まず人間がもっている「本能的な欲求」を知る必要があります。
人間の欲求(ニーズ)は50年間で大きく変わった
アメリカの心理学者「アブラハム・マズロー」氏は、「欲求段階説」で人間の根本的な欲求を5段階のレベルでモデル化しました。
有名なので、どこかで一度は聞いたことがあるかもしれませんが、次のようなものです。
【第4段階】承認(尊重)の欲求 (Esteem)
【第3段階】社会的欲求/所属と愛の欲求 (Love and belonging)
【第2段階】安全の欲求 (Safety needs)
【第1段階】生理的欲求 (Physiological needs)
一般的に、段階が低いものほど基本的な欲求(人間誰もがもつ欲求)、高いものほど高次元の欲求と言われています。
日本でも昔、モノが十分に供給されていなかった時代は、多くの人にとって第1〜2段階目の欲求がニーズの中心軸にありました。
昭和40〜50年代に流れていたCMのキャッチフレーズも、「象が踏んでも壊れない」「100人乗っても大丈夫」といった製品の機能性、安全性をアピールしたものが多かったのもこのためです。
しかし現代では多くの人が生活にさほど不自由しなくなったため、ニーズの中心は「第3〜5段階」にシフトしています。
過信は禁物!中身が伴わないと逆効果に
本記事でご紹介する法則やテクニックを使えば、たしかに「売れそうな」キャッチコピーは誰にでも作れます。
しかし「悪用厳禁」としたのは、どんな優れたフレーズで人をひきつけても「中身」が伴っていないと「逆効果」になるからです。
例えば「誰でも副業で月10万円稼げる方法」というタイトルにつられて、そのWebサイトを開いたとします。
でも記事のどこにも「実現するための具体的かつ再現性のある方法」が書かれていなかった場合は、「看板に偽りあり」です。
タイトルで期待値を上げすぎてしまったぶん、読者はがっかりして二度とそのサイトを訪れたくなくなるでしょう。
このように、提供する商品やサービスに釣り合わないコピーは自らの首をしめる結果を招くため、過剰な表現には注意しましょう。
「社会的欲求(所属と愛の欲求)」を刺激するキャッチコピーの作り方
「社会的欲求(所属と愛の欲求)」とは、家族や友人、会社組織など、社会に「居場所」を持ちたい、必要とされたいという欲求です。
この欲求が満たされると、人は愛や絆、人とつながっている満足感、安心感を感じます。
オンライン協力タイプのゲームが中毒性をもつのも、ネット上で「誰かとつながっていたい」「自分が活躍できる場所がほしい」という心理が影響しています。
「社会的欲求」を刺激するキーワード一覧
人や組織とつながっていたい欲求は、裏を返せば「人並みでありたい」「仲間外れにされたくない」欲求であると言えます。
さらに社会のムーブメントから取り残されたくない、流行やタイミングに乗り遅れたくない、といった欲求にも派生します。
また、大勢の中で「恥をかきたくない」「自分だけ損をしたくない」という意識もあります。
ここをうまく刺激するキーワードを使うと、キャッチコピーとして活用することができます。
・愛、優しさ、絆、つながり、助け合い
・居場所、コミュニティ
・誰でも簡単、すぐできる
・常識、みんながやっている(知っている)
・まだやってないの(未経験)?
・やっていない(知らない)のは「あなただけ」かも?
・もったいない、人生損してる
・恥をかかないためにやっておきたい(知っておきたい)こと
・「知らない」ではすまされない
・「知らない」と怖い
・いまさら「人に聞けない」
・人気急上昇、話題の、話題沸騰、ブーム、一大旋風、大ヒット
・全米が泣いた、日本中が感動、
・期間限定、タイムセール、本日限り
「社会的欲求」を刺激するキャッチコピーの例
以上のキーワードを組み合わせて応用すると、「社会的欲求」を刺激するキャッチコピーが出来あがります。
・乗り換える人が急上昇中!話題のサービス「○○○○○」
・話題沸騰!「○○○○○」もネットでお得に選ぶ時代到来
・未体験はもったいない「○○○○○」のチカラ
・知らないと損してるかも?「○○○○○」の新常識
・いまさら人に聞けない「○○○○○」の常識、教えます
・この春、日本中が感動の涙につつまれる。愛の実話がついに映画化!
※「○○○○○」の部分には具体的な商品やサービスの名前を入れてください
「承認(尊重)の欲求」を刺激するキャッチコピーの作り方
「社会的欲求」が満たされると、人は社会の中から「認められたい」「尊敬されたい」「特別扱いをされたい」と願うようになります。
SNSで自撮り画像やおしゃれなカフェ、ランチの様子をアップするのも「いいね!の数」という、目に見える形の「他者の承認」を得たいためと説明できます。
また、サービス業や小売業も、昔に比べ接客態度やおもてなしの姿勢(ホスピタリティ)が向上しています。
これは、人の「丁重に扱われたい」ニーズが高まり、サービスに反映されたためと言えるでしょう。
「承認(尊重)の欲求」を刺激するキーワード一覧
・特別、格別、ワンランク上の、ハイクラス、ランクアップ
・上品な、上質な、おしゃれな、贅沢、ラグジュアリー、プレミアム
・ゴールド、プラチナ、ダイヤモンド
・エリート、プレジデント、ファーストクラス
・ご招待、ご優待
・あなたに相応しい、プロ仕様、セレブ御用達
・違いがわかる人にこそ使ってほしい
・上得意様(プラチナ会員様)限定
・一歩先をいく、最先端の、初上陸、画期的
・センスがいい、ハイセンス
・賢い人の〜、頭のいい人の〜、賢明なあなたに
・腕のいい人はやっている(知っている)
・おしゃれな人はやっている(知っている)
「承認(尊重)の欲求」を刺激するキャッチコピーの例
社会や他人から「認められたい」「特別扱いされたい」という欲求をくすぐるには、その人が言われて喜ぶようなことをイメージして言葉を選びます。
近年は価値観も多様化してはいますが「あなただけは特別」「違いがわかる」「頭がいい」「お洒落」などは、老若男女問わず、言われて嬉しくないひとはまずいないでしょう。
これらのワードは高級品やオーダーメイド品など、比較的高単価の商品やサービスに使います。
廉価なものに使ってしまうとアンバランスさが目立ってしまうので注意。
・●●名様だけの特別ご招待。「○○○○○」プレミアムツアー
・違いがわかる人に使って欲しい。プロ仕様のツール「○○○○○」
・一歩先をいくあなたに。「○○○○○」は世界最先端のパーソナルケアシステムです
・できる人は使っている、ネット英会話「○○○○○」
・世界中のエリートに愛される「○○○○○」でひとつ上の贅沢を
・パフォーマンスを求める人に。「○○○○○」があなたをサポート
・おしゃれな人は知っている。洋服選びの正解は「○○○○○」にあり
※「○○○○○」の部分には具体的な商品やサービスの名前を入れてください
「自己実現の欲求」を刺激するキャッチコピーの作り方
一般的に言われる「5段階の欲求」の最上位にあるのが、「自己実現の欲求」です。
衣食住が満たされ、社会とのつながりもある人なら誰しもが目指す「人生のゴール」のようなものです。
そのため、「最上位」欲求ではありますが、セールスの対象は経済的に豊かな人だけとは限りません。
また、「パワースポット」のように、成功や幸福を後押ししてくれるような響きのキーワードも有効です。
「自己実現の欲求」を刺激するキーワード一覧
・夢、希望、目標、理想、成功、自由、フリー、開放
・オリジナル、オーダーメイド、唯一無二の
・自己成長、スキルアップ
・人生で一度はやってみたい、行ってみたい、食べてみたい
・一度きりの人生で後悔しないために
・理想を叶える、夢を実現する、想いをカタチに
・なりたい自分になる、やりたいことをやる
・大好きを仕事にする、好きなことをして生きる
・ラッキーカラー、ラッキーアイテム、パワースポット
「自己実現の欲求」を刺激するキャッチコピーの例
価値観が多様化する現代では「自己実現」の形も人それぞれです。
マス(大衆)向けの言葉だけでは漠然としてしまうので、年齢、性別、ライフスタイルなどを「絞り込む」キーワードを盛り込むと感情が動きやすいコピーが作れます。
・一度きりの人生で後悔しないために、20代からできること
・夢を叶えるなら「○○○○○」のオリジナルウェディング
・理想のマイホームなら「○○○○○」オーダーメイド注文住宅
・なりたい自分になれる!女性専用パーソナルジムなら「○○○○○」
・大好きを仕事に!ゲーム業界の就職に強い「○○○○○」スクール
※「○○○○○」の部分には具体的な商品やサービスの名前を入れてください
【お手軽】お金をかけずに「語彙力」を磨く方法
以上、比較的一般的と思われるキーワードについては網羅したと思いますが「聞き慣れた言葉」は逆を言えば新鮮味がありません。
日本語は、漢字・ひらがな・カタカナ・アルファベットまで組み合わせて表現できるので、日々新しい言葉が生み出されています。
そのため使える言葉の数、「語彙力」を上げることも「売れる」キャッチコピーを作る上で大切になってきます。
…といっても、特に難しいテクニックやお金をかける必要ありません。
その方法は、いたってシンプル。
世の中にあふれている広告やWebサイトなどのタイトルを見て、ピンときた表現をメモするだけ。
メモする先は、紙のメモ帳でも、スマホのメモやメールアプリでも何でもOKです。
さすがに丸パクリはNGですし、そのまま使っても自社の商品やサービスにフィットしないはずですが、語彙力は格段に高まります。
【これだけは知っておきたい】キャッチコピーを作る上で注意すべき3つのリスク
日本語は表現の幅が広く、造語にも寛容なので、コツをつかめばそれらしいキャッチコピーは素人でも作れます。
しかし、現代ならではの「リスク」も潜んでいるので、「これだけは知っておきたい」と思うものをまとめます。
- 過激・差別的なキーワードは使わない
- 法律的にNGな「誇張表現」を避ける
- 「アート的」なフレーズには手を出さない
①過激・差別的なキーワードは使わない
インターネットやSNSが浸透した現代では、誰でも匿名で意見を言ったり情報を拡散できるので、PR活動は常に「炎上」リスクと隣合わせにあります。
特定の人を貶めたり、煽ったり不快にさせるような言い回しは避けましょう。
「過激」とまでは言えないまでも、人によって好みが分かれるような言葉、ネガティブなワード、スラングなども避けたほうが無難。
同じような意味でポジティブな言葉に言い換えを検討したほうがいいでしょう。
・サルでもわかる → 誰でも簡単3ステップ
・あなただけにこっそりと教えます → ○○○クラス会員様だけに特別なお知らせ
・「○○○」を知らない人は遅れてる → 知らないと損してるかも?
・まだ「○○○」を使っているの? → 「◎◎◎」が優秀!「○○○」から乗り換えてよかった
②【要注意!】誇張表現は法律的にもNG
たびたびニュースになる「誇大広告」の問題も、他人事ではありません。
他社の商品やサイト、広告で使っている言葉だからOKだろうと安易に流用するのはNG。
「景品表示法」では、過度の誇張表現による企業間の過当競争を抑制しています。
また、健康器具やサプリメントなどは表現規制が厳しく「医薬品医療機器等法(薬機法)」にふれる可能性も。
せっかく苦労して書いたキャッチコピーでペナルティを受けないように、法律等に抵触しないか事前に確認しておきましょう。
③「アート的」なフレーズには手を出さない
世の中には、語り継がれる「名作」とも言えるキャッチコピーがたくさんあります。
興味がある方は「キャッチコピー 名作」などのキーワードで検索してみてください。
キャッチコピーやフレーズづくりは一見簡単そうに見えるのですが、その裏ではプロジェクトの目的に合わせた緻密な計算と試行錯誤があります。
一種の「アート」のようにも見えるコピーも、ターゲットに向けた言葉選びやリズム、読みやすさ、見る人が受ける印象やとってほしい行動、使われるシチュエーションなど、ありとあらゆる要素が考え抜かれています。
だからこそ「名作」なのです。
名作コピーをインプットしていくと、つい自分も「美しくてエモいコピーを書いてやろう」など自意識が出てしまいますが、変な「ポエム」のように陶酔した文章は見る人をしらけさせます。
コピーライティングはあくまでもデザインの一環。商品やサービスの良さを伝える「脇役」に徹するべきなのです。
自分では「名文」と思っても、他の人はピンとこない可能性も…。世に出す前に第三者に確認してもらいましょう
【まとめ】キャッチコピーを作る力は「自分の人生」もより豊かにする可能性がある
以上、人の本能を刺激する「売れる」キャッチコピーの法則と作り方について解説しました。
・モノがあふれる現代は「高次元な欲求(ニーズ)」を刺激するフレーズが効く
・ターゲットを絞り込むキーワードを加えて競合と差別化する
・誇大広告は厳禁。コピーで「中身のなさ」はごまかせない
・法律にふれていないか?自己陶酔していないか第三者に見せてチェックする
キャッチコピーづくりは奥が深くて、自分では「良い!」と思った渾身のフレーズがまったくウケずに滑ってしまうこともあります。
また、限られた少ない文字数で「一番言いたいこと」「あえて言わずにぼかすこと」などを取捨選択する必要があるので、要約力も試されます。
一方で「語彙力」や表現の幅が増すと「人生の奥行きや味わい」も比例するように増えていきます。
例えば、
・文書の誤字脱字、誤用に気づけるようになる
・アート鑑賞で、感じ取り理解できる情報量が増える
・自分の言いたいことを要約して伝えられるようになる
・世の中の広告に潜む数字や言葉の「罠」に気づけるようになる
・感情の起伏など抽象的な概念を言葉にして表現できるようになる
など、本職のライターでなくてもプライベートや仕事で「得する」場面が、実は結構あるのです。
特に、言葉や文章が好きな人は磨いておいて損はないスキルです。
テレビやYouTube内のCM、雑誌や新聞や電車内の広告、お店のポスターやPOPなど、トップクラスのコピーライターが汗して書いた「最高の教材」を、どれも「無料」で見ることができるのですから。
ふだんの生活で目にするコピー文に意識を向けて「誰に向けて」「どんなアクションをさせたい文章なんだろう?」と考えるだけでもライティング力はグッと高まります。
商品やサービスの名前など、「印象に残る」名付け(ネーミング)の法則やテクニックを知りたい方はこちらもどうぞ。